乙女心晒し

乙女心という名の恥を晒していきます

私の好きな人③

 私は男好きで他の女の子よりも甘い採点で男の子を見てるから、固執する対象は別に彼じゃなくても良かった。花火大会の帰り道にファーストキスを捧げた凡庸な男でもよかったし、小学生の頃1人だけ高価そうな革製の茶色いランドセル背負っていた男子でもよかった。

 それでもやっぱり、彼が好き。

 

 妄想の中で、彼と付き合うまでのパターンはこれまで無数に創り上げてきた。その夢物語のひとつを文字にしてみるのもきっと楽しいのだろうけれど、なんかブログって現実表現の手段っぽいし、"このブログはフィクションです"ってなんかねえ…。でも昔都合よく捉えた出来事は年々美化という磨きがかかっているので、事実を文字にすることは不可能だ。だから今回は、インスタント焼きそばに付属している意味無さげなふりかけみたいに事実がトッピングされた虚構をぽちぽちさせてほしい。

 

 好きな人は大抵、制服の白シャツの胸の部分から派手な色味のインナーを覗かせていた。ある日、暑い日だったか雨の日だったか、朝礼が終わった休み時間、彼はおもむろに白シャツを脱ぎ下に着ていたタンクトップをすべて露わにさせた。好きで、欲しくて仕方のない粒子たちが吸い込まれるように教室の一点に集中していて、もうどうすれば良いのかわからず私はただ呆然と眺めていた。上半身のフォルム、色白な肌、刺激色…情報量が多くて苦しい。 

 

 巨大フルーツタルトに乗っているメロンは最初のうちに食べておこうと目論んでいたら、全部ミキサーにかけられてどろどろになったものを口に流し込まれた気分になった。

"美味しいものは1番美味しく感じる順番で食べたいという私のこだわりが侮辱された"という怒りで、最初から手に入らない高級フルーツタルトだということを束の間忘れていた。

 彼の胸板に密接する目が痛くなるようなショッキングピンクの布地よりも、鍛え上げられた二の腕の方が刺激的で、私はそんなものを世界に露呈しても大丈夫なのかと心配しながら、口から溢れそうな流動食タルトを誰に「意地汚い」と言われようが、絶対にこぼさず食べ切ってやると意気込んでいた。

 

 授業が始まるチャイムで我にかえると口の中はカラカラで、家で沸かした麦茶を急いで飲んだ。

 

 

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